新型コロナウイルスの感染予防対策として、うがい、手洗い、マスク、アルコール消毒などが一般的ですが、最近、「舌みがき」が新たに注目されていることをご存知でしょうか。

私たちの舌の表面には舌乳頭（ぜつにゅうとう）という細かい突起がたくさんあり、繊毛状のヒダで覆われています。これは、広げると実にたたみ８畳分ほどの大きさになります。その表面に、食べかすや剥がれた粘膜などが付着して白い塊ができますが、これが舌苔（ぜったい）です。
舌苔は歯周病菌など、毒素を排出する菌の格好の住み処となっています。外からウイルスが入ってくると、これら毒性の強い菌が“受容体”となって舌の組織と結合させますが、その結果、ウイルスは容易に体内に侵入・感染することとなります。つまり、口中の細菌が多いとウイルス感染のリスクを高めることになり、さらにこれらの菌が気管を通り肺に入ることで肺炎を引き起こします。
東京大学医科学研究所と日本ウイルス学会は、ACE２と呼ばれるこの受容体が舌の上（舌苔）に多く存在していることから、舌清掃が重要であることを強調しており、また、鶴見大学歯学部の花田信弘教授は、「舌みがき」をすることで新型コロナウイルス感染のリスクを減らすことが可能であると提言しています。詳しい情報は、本ブログ下部の＜参考＞をお読みください。

さて、それでは実際にどのように「舌みがき」をしたらよいのでしょうか。

舌みがきのためには、専用の金属製「ヘラ」特に金（きん）が最適であると、太古の時代よりインド伝承医学アーユルヴェーダが教えています。舌みがきは通常、一日一回、起床後、タング・スクレーパーと呼ばれる専用器具を舌の奥から手前に向けて数回、やさしく動かして行ないます。それだけで舌苔を効果的に取り除くことができますので、舌の表面をゴシゴシしたり、取りすぎる必要はありません。　　
ところで、ウイルスは寝ている間、一時間ごとに倍々で増殖し、あっという間に数千億個まで増えると粘膜から体内に侵入するといわれています。新型コロナウイルス対策が叫ばれる昨今、朝起きたときだけではなく、夜寝る前の舌みがきが推奨されるのはこのためです。これを行なわないでいると、繁殖した細菌、ウイルス、毒素をふたたび吸収することになりますので、特にこの時期、毎日必ず、または一日二回、舌みがきを行ないましょう。

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新型コロナ対策には、
うがい・手洗い・マスク・消毒と、タング・スクレーパーU。
頭の文字をとって、ウ・テ・マ・シ・タ！　でお願いします。

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＜参考＞『重症化を防ぐため、口腔ケアと舌磨きの徹底を』
（Webケアニュース　シルバー産業新聞2020年9月10日号より要約・改変）

Ⅰ．重症化のカニズム
新型コロナウイルス感染症の重症化に、口腔衛生が深く関係していることがわかってきた。口腔清掃を怠ると、細菌や毒性物質が口腔内の上皮細胞を破壊する。これが歯周病の始まりで、実は日本人の約８割が罹患している。
歯周病になると細菌や毒性物質が血管から全身に拡散することになる。歯周病菌などの細菌が全身に拡散する状態を「菌血症」、そして菌血症が進行して歯周病菌がもつ毒性物質エンドトキシン（ＬＰＳ）が拡散される状態を「エンドトキシン血症」という。
口腔の衛生状態が悪い場合に新型コロナウイルスに感染すると、なぜ重症化するリスクが高まるのだろうか。人が新型コロナウイルスに感染すると、まずウイルス性の肺炎を発症する。これにより、肺の免疫力が低下し、正常時ならば防ぐことのできる細菌の攻撃を受けて、細菌性肺炎を発症する（二次性細菌性炎肺炎）。この際に、エンドトキシン血症も発症していると、細菌の攻撃で傷ついた肺の細胞に自滅するようにと命令を出すサイトカインが過剰放出される。細胞の修復が追い付かなくなり、多くの細胞が死んでしまう免疫暴走（サイトカインストーム）が起きる。こうして口腔の衛生状態の悪化が、ひいては新型コロナを重症化させ、最悪の場合は死に至ることとなる。
これらの知見により、鶴見大学歯学部探索歯学講座の花田信弘教授は、新型コロナウイルス感染症の発症や重症化を予防する対処方法として、歯と口の健康維持の重要性を強調している。

Ⅱ．口腔衛生と栄養摂取
ウイルスに感染しにくい体をつくるためにはビタミンＥやビタミンＣが多く含まれる緑黄色野菜がすすめられる。生で食べると、よりビタミンを効率的に摂取できる。
また、サイトカインストームを引き起こすエンドトキシン血症は、「善玉コレステロール（ＨＤＬ）」を増やすことで発生を防ぐことができる。ＨＤＬは、栄養コントロールによる摂取や運動することにより増やすことができる。
栄養摂取と運動に加え、重症化予防のためには毎食後の歯磨き、一日一回、または二回の舌磨きが重要であることはいうまでもない。