シヴァ神と<ビルヴァの葉>

あるシヴァラートリーの日(シヴァ神の威光を讃える吉祥な日)、森でたくさんの鳥を殺したハンターが、空腹のライオンに追われました。ハンターはライオンの攻撃から身を守るためビルヴァの木に登りましたが、ライオンは一晩中、獲物を狙って待っていました。ハンターは眠ってしまって木から落ちないよう、ビルヴァの葉を摘み取っては下へ落としました。するとその葉は偶然、木の下にあったシヴァリンガ(シヴァ神の聖なる石)に幾重にも重なりました。このビルヴァの葉の捧げものに満足されたシヴァ神は、ハンターが鳥を殺した罪をすべて赦し、彼を助けました。
知らず知らずのうちに行っていた善行によってシヴァ神の恩恵に与ることができた、というこの神話は、シヴァラートリーの日に、ビルヴァの葉でシヴァ神を崇拝することの幸運と重要性を説いています。

■ビルヴァ
ヒンディー名:Bel
サンスクリット名:Bilva
学名:Aegle marmelos
英名:Storne-apple
科:ミカン科
種:ベルノキ
原産地:インド

ミカン科ミカン亜科の落葉高木の一種。固い外殻をもつ果実は “Wood Apple”と呼ばれ、果肉はマーマレードや、Sherbet(シャーベット)という人気のドリンクに加工されます。

インドでは「聖なるビルヴァの葉無しに、シヴァ神へのプージャ(祭儀)は完成することはない」と言われています。
3出の葉は、『創造・維持・破壊』、『サットヴァ(純質)・ラジャス(激質)・タマス(暗質)』、『聖音オーム(AUM)』、『シヴァ神の3つの眼』、『シヴァ神の持つトリシューラ(三叉槍)』の象徴とされます。
プージャの後にお供物でビルヴァの葉をいただいたら、胸のポケットに入れておくとよい。シヴァ神のバイブレーションが伝わり、体・心・精神の健康にポジティブな影響を与える、と言われています。

ウィリアム・ロクスバラの『コロマンデル海岸の植物誌』(英: “Plants of the coast of Coromandel”)第2巻(1798年)の図版143番より