ムルガ神と<マンゴー>1/5

■聖パラニ山の神話①
聖者アガスティアの祈りに応え、シヴァ神と神妃ウマ(女神パールヴァティー)が、 聖地カイラスの「シヴァ・ギリ」、「シャクティ・ギリ」と呼ばれる山の上に、お現れになりました。聖者アガスティアはシヴァ神と神妃ウマを拝し、この2つの山を南インドはポティガイ丘陵に居える自らの住まいに移したいと願い出ました。

シヴァ神の許しをいただいた聖者アガスティアは、弟子のアスラ(魔族)であるイドゥンバンに2つの山を運ぶよう命じ、そのためのマントラを唱えて、道順を教えました。イドゥンバンはカヴァディーという天秤棒に2つの山を載せ、肩にかついで出発しました。しかしパラニ山のところで道に迷ってしまい、ひどく疲れてもいたので、天秤棒を下ろして休みました。

時を同じくして聖地カイラスではシヴァ神が、『宇宙をぐるりと周って、早くわたしのもとに戻ったほうに、聖者ナーラダからもらった、比類無き甘味をもつ果実(マンゴー)を与えようと、第一皇子のガネーシャ神と、第二皇子のムルガ神を競わせました。ムルガ神は、すぐさま光よりも速い孔雀に乗って空に飛び立ちましたが、一方のガネーシャ神は、自分の乗り物のネズミでは勝ち目がないと判断し、両親のまわりを周って『父と母がこの宇宙のすべてです!』と称えました。その智慧をたいそう喜んだ両親は、思わず果実をガネーシャ神に与えてしまいました。 一瞬の後に戻ってきたムルガ神は、兄皇子に裏をかかれたことを知り、怒りに震えます。 そして「わたしは今後、家族の元に戻らない」という誓いをたてて、孔雀に乗って家を出てしまいました。

こうして家出したムルガ神が立てこもったのが、聖パラニ山です。しかしムルガ神は天の軍隊を率いていましたから、天界を留守にされるのは、神々にとって大変都合の悪いことでした。そこでムルガ神の怒りをなだめるため、シヴァ神と神妃ウマがその後を追い、言いました。『天軍の総帥ムルガよ、そなたはたかだか果実のことで、心煩わせるでない。なぜなら、そなた自身が、この世のあらゆる叡知の果実そのものなのだから』

この地がパラニPazham-nee (You are the fruit) と呼ばれる所以です。

<続く 2/5>

※すべてのイラストは”Arulmigu Dandāyudhapani Swāmi Dēvasthānam, Palani”より転載