ムルガ神と<マンゴー>5/5


■ティル・チェンドールのムルガン寺院に伝わる、<マンゴーの木>にまつわる神話

要塞島ヴェーラ・マヘンドラプリを治めるスーラパドマという名のアスラ(悪魔)がいました。スーラパドマがシヴァ神に祈りを捧げる数多くの苦行を実践すると、シヴァ神は彼に多大な恩恵を与えました。

やがてスーラパドマは思い上がり、天界・地上世界・地獄の3界を占領し、天界の神々を召使いのように働かせるようになりました。神々はこのような仕打ちに耐えきれず、シヴァ神に不満を訴えました。シヴァ神は第三の目を開いて息子を創造し、スーラパドマを葬らせることにしました。第三の目から6つの炎の光が放たれると、これら神聖な光は火の神アグニにより聖河ガンジスに伝えられ、ヒマラヤの湖サラヴァナ・ポイガイに送られました。ここで光は6人の赤子になり、キリティカの乙女たちに乳を与えられ育ちました。

ある時、シヴァ神と女神パールヴァティがサラヴァナ・ポイガイを訪れました。女神パールヴァティが愛を込めて6人の赤子たちを抱きしめると、赤子たちはひとつになり、6つの顔と12本の腕を持つムルガ神が誕生しました。ムルガ神が成長し若者となると、シヴァ神は“スーラパドマを滅ぼし、神々をその無慈悲な軛から解放するよう”ムルガ神に頼みました。ムルガ神は巨大な軍隊を率いて、ティル・チェンドゥールに到着し、陣を張りました。ムルガ神は副官ヴェーラバフを使者としてスーラパドマの元に送り、神々を解放するよう要求しましたが、スーラパドマがこれを拒否したため、戦争となりなりました。

短くも激しい戦いが繰り広げられました。最初の五日間の戦いで、スーラパドマの兄弟たちと彼を除くすべてのアスラたちが亡き者となりました。六日目、ムルガ神とスーラパドマが対決し、ムルガ神の槍がスーラパドマの体を貫くと、スーラパドマは自らを<マンゴーの木>に変化させ、ふたつに分裂させました。すると即座にその片方は巨大な孔雀、もう片方は雄鶏へと姿を変えました。ムルガ神はこの孔雀をご自身の乗り物とし、雄鶏を旗としました。

この出来事はスラサムハラム、すなわちスーラパドマの最期として一般に知られています。スラサムハラムの後、ムルガ神は父シヴァ神を礼拝することを望みました。こうして建築の聖者マヤンがティル・チェンドゥールにティル・チェンドゥール・ムルガン寺院を建てました。現在でも、シヴァ神を崇める姿勢のムルガ神を、聖室で目にすることができます。