クリシュナ神と<アルジュナの木>1/2

『バーガヴァタ・プラーナ』の神話

聖山カイラス(シヴァ神の住処)に住む財宝の神クベーラには、ナラクーバラとマニグリーヴァという2人の息子がいました。富と権力に恵まれていた彼らは次第に傲慢になり、堕落した生活を送っていました。
サティヤ・ユガの世、神仙ナーラダは、ナラクーバラとマニグリーヴァが、聖河マンダーキニー(天界に流れるガンジス)の中で、アプサラス(水の精)たちと、全裸で浮かれ騒いでいる光景を目にしました。アプサラスたちは恥じらって慌てて身を隠しましたが、2人は酒と美女に酩酊していたため、ナーラダを無視するという無礼をはたらきました。
そこでナーラダは、富と権力を誇って盲目となった彼らへの慈悲を示すために、罰を与えました。2人を地上へ落とし、樹の姿に変えるという呪いを発したのです。神々の時間で百年間、2人を2本のアルジュナの樹の中にとどまらせ、自分がなぜ樹になったのか熟考できるように、過去の記憶を覚えさせておきました。また、地上へ降臨される主クリシュナの恩恵によって、元の神々の姿に戻されるという予言をしました。

こうして2人の神々は、2本のアルジュナの双生樹となって立ち、罪を悔いて、主を瞑想し続けました。

ドヴァーパラ・ユガの世、(クリシュナの育ての母である)ヤショーダーは、いたずらをした幼いクリシュナのお腹を縄で縛って臼にくくりつけました。クリシュナはアルジュナの 双生樹 に気付き、神仙ナーラダの予言を成就させるべく、臼を引きずりながら、2本の樹の間を這っていかれました。臼が樹と樹の間に引っ掛かりましたが、偉大な力をもつクリシュナはそのまま進み、2本の樹は根こそぎ倒されました。すさまじい音と共に大地に崩れ落ちると、そこに、全ての自尊心を剥ぎ取られた2人が、あたりを偉大な輝きで照らしながら出現しました。

(画像:ウキペディアより引用)
アルジュナの根元


主クリシュナによって過去の罪があがなわれた2人は呪いから解放され、主への信仰心を得て、再び天界に帰っていきました。

またアルジュナは、主クリシュナが触れることによって、神木へと変容しました。

2/2へ続く


ユガ:インド哲学における「時代」。 サティヤ・ユガ、トレーター・ユガ、ドヴァーパラ・ユガ、カリ・ユガの順に、4つの時代が循環する。